嘘と愛
楓はディアナを見送って、港のカフェにやって来た。
ちょっと一息ついて、窓際の席でカフェオレを飲んでいる楓。
「隣、座っていい? 」
聞きなれた声に、楓は驚いて顔を上げた。
「やぁ」
そこにいたのは幸喜だった。
どうしてここにいるの? と驚いている楓に、幸喜はそっと微笑んで隣に座った。
注文を聞きに来たウェイトレスに珈琲を注文した幸喜。
「ねぇ。今シティーホテルに泊まっている? 」
「あ…いえ…その…」
言いよどむ楓の手に、幸喜はそっと手を重ねた。
「もう嘘はやめようって、言ったじゃないか。どうして連絡してくれなかったの? 僕では、力になれない事? 」
「…ごめんなさい…。落ち着いたら、連絡するつもりだったの」
「そっか。今朝、僕も早く仕事に来ていてね。偶然だけど、君がシティーホテルから出て来るのを見たんだ。だから気になって、着けてきてしまったんだけど」
もしかして、見ていたの? 全部…。
そう思い、楓はチラッと幸喜を見た。
注文した珈琲が届いて、幸喜はそのままブラックで飲み始めた。
「…もうあれで、本当に最後の嘘にしようね…」
そっとカップを置いて、幸喜は楓を見つめた。
「はい…」
小さく返事をする楓。
「あの嘘は、君の最大の愛だって僕は思っている。彼女も、改心していたようだから。もう二度と、何かをけしかけて来ることはないと思うよ。だから、もう君は自分が幸せになる事を考えればいい。零も、事件が解決したら刑事を辞めると話していたから。もう何も心配する事はないよ」
「…はい、そうします…」
しばらく幸喜と楓は、他愛ない話をしながらカフェで過ごしていた。
クルーザー爆破の捜査が行われ、ディアナの保険証が発見され乗っていたのはディアナだと断定された。
海には誰も飛び込んだ形跡はなく、ディアナの荷物と思われる物と保険証のみが見つかった事から、ディアナはクルーザーを爆破して自殺したのではないかと警察は判断していた。