エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
出会った時は身なりを完璧に整えていたが、それは法廷帰りであったためのようで、普段の彼は無精ひげに寝ぐせ、ノーネクタイのワイシャツの裾がスラックスからはみ出している時もある。
難しい法律用語を駆使して頼もしく相談にのっている今も、ひげは剃られていなかった。

詩織は相談室前から離れ、事務所内を奥へと進む。
ここは昭和の中頃に建てられた元女子学生会館。
更地にして売る話が持ち上がった八年前に、矢城が買い取り、リフォームしたそうだ。

広さは二十畳ほど。
個室だった数部屋の壁を抜いてワンフロアとしたため、やけに多い柱が残されている。
ヘリンボーン調の床は味わい深く、高い位置にある窓はすりガラスだ。

壁掛けの振り子時計と、ダークブラウンの座り心地のよいソファの応接セット。
事務机がふたつと書類の詰まった木製棚。
それだけならレトロな味わいの素敵な事務所に思えるのに、ここにも相談室にあったのと同じ衝立が複数枚あって、見られたくないものを隠していた。

事務所の奥側は、矢城の生活スペース。
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