エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「へたっぴ」「河童? どう見ても亀だ」と言い合う美緒と赤沼の声が聞こえる。
矢城のなでなで権を賭けてヒートアップしていくのが、衝立で見えなくても伝わってきた。

(私が先生に告白したら、美緒ちゃんと赤沼さんに怒られそう……)

ナワポンは、「告白したら教えてね。じゃあ私は二階に戻るよ」と階段の方へ去っていった。

「言える、かな……」

賑やかな声を聞きつつ、眉尻を下げて独り言ちた詩織であった。


時刻は十四時過ぎ。
今日は午前中から赤沼と少年院に出かけていた矢城が、ひとりで帰ってきた。

「お帰りなさい。お疲れさまでした」

赤沼の席を借りて仕事をしていた詩織は、矢城にコーヒーを出そうと立ち上がる。
矢城は自分の机で黒革の鞄からノートパソコンと書類を取り出し、コーヒーはいらないと言う。

「それより詩織ちゃんに頼みたいことがある。至急、郵便局に行って、これを速達で出してきてほしい」

詩織は台所に向かおうとしていた足を止め、机の方に引き返す。
矢城からA4サイズの白い封筒を受け取る際に手が触れ合った。
思わず手を引っ込めてしまい、落とした封筒を慌てて拾う。

「すみません!」

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