エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
顔は熱く、胸が高鳴っている。
告白するとナワポンに宣言してから十日が過ぎても、実行できずにいた。

意識すればするほど、矢城の顔をまともに見られず、困るばかりだ。
こんな風に日中にふたりきりになることはしばしばあるのだが、業務中に恋愛事の話はいけないと、生真面目に思ってしまう。
仕事が終わった夜や休日は、住人たちが行き来するので、やはり想いを伝えるチャンスがない。

(今日も言えずに終わりそう……)

「郵便局ですね。行ってきます」と矢城に背を向けようとしたら、「待った」と引き止められた。
矢城が詩織との距離を詰め、手を伸ばしてくる。
石のように体を硬くした詩織の額に、矢城の右手が触れた。

「熱があるんじゃないか?」
「な、ないです」
「そうかな。顔が赤いよ」

詩織が息をのんで目を丸くしたのは、矢城が額を合わせてきたからだ。
至近距離に、まぶたを閉じた端整な顔があり、詩織の血液が一気に顔に集中した。
動揺のあまり、矢城の胸を押してしまう。

詩織が口から心臓が飛び出しそうな状況であるのを、矢城はわからないのだろうか。
ごく普通の口調で、首を捻って問いかける。

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