エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
美緒は宿題がたくさんあると言っていたので、今夜は矢城を絵しりとりに誘う暇はないだろう。
赤沼は珍しく学生時代の友人と飲み会だと出かけている。

ナワポンは仕事で不在。
ホテルの清掃とベッドメイクを仕事にしていると聞いたが、なぜか三交代制らしい。夜中に出かけていく日もある。

パジャマ姿の詩織は寝室として借りている相談室を出ると、衝立の向こう側に足を踏み入れた。
食卓テーブルにいるのは、矢城ひとり。
ボタンをふたつ外したワイシャツ姿で、テレビのドキュメンタリー番組をぼんやりと見ながら、ビールを飲んでいる。

たまに外で飲むことはあるようだが、ここでアルコールを口にしている姿を初めて見た。
ビールは買ったわけではなく、最近、新たに契約してしまった新聞の販促品のようだ。
つまみは柿ピー。それも、もらいものである。

両手を握りしめて自分を鼓舞した詩織は、ゆっくりと矢城に近づいた。
頬杖をついている彼の視線が詩織に流され、それだけで心臓が大きく波打つ。

「矢城先生、あの、少しお話してもいいでしょうか……?」

矢城が詩織の方に体を向けてくれた。
「なに?」と弓なりになった瞳は優しい。

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