エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
赤沼が出かけている時は、こうして机を借り、事務所内にいる時は相談室や応接テーブル、時には奥の食卓テーブルでも仕事をする。
雇ってもらえただけで深く感謝しているので、机がないことに少しの文句もない。

(ええと、この書類の書き方は……)

離婚訴訟に関する申請書。
それを教わった通りに入力しながら、詩織は胸の奥にズンとした痛みを覚えた。
嫌でも思い出してしまうのは、半月ほど前に、所属していた芸能事務所の社長からぶつけられた言葉だ。

『なんてことをしてくれたんだ。日洋テレビの小関プロデューサーは葉山裕子の夫だぞ。大女優の夫に手を出すなんて、自分の立場がわかっているのか? ドラマを降板したからといって許されない。お前ひとりの問題ではなく、うちの事務所全体に迷惑がかかっているんだ』

駆け出しの女優、浅木清良が芸能界を追放された理由は、大女優の夫との不倫関係が週刊誌によって暴かれたためだ。
とはいっても、詩織は相手が既婚者だとは知らなかった。

交際期間は、ひと月ほど。
小関は、詩織が出演中だったドラマの製作スタッフで、優しげな風貌の四十二歳。
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