エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
けれども深刻そうな母親の顔を見た矢城は今、話を聞いてあげるようだ。

詩織がコーヒーカップを来客の前に置くと、母親は「ありがとうございます」と会釈した。
娘の方は暗い顔をして黙ったままだ。

紺と水色のチェックのスカートにブレザーという制服は近所で見かけたことがあるので、近隣の高校に通っているのだろう。
肩上までの黒髪を下ろし、制服を着崩さず、メイクやアクセサリーはなし。
真面目で大人しそうな少女に見える。

母親は四十になるかならないかであろうか。
小柄で整った顔をしているが、化粧はごく薄く、少々よれたブラウスと色あせたスカート姿が生活苦を感じさせた。

「メモを取って」と矢城に言われたので、詩織は紙とペンを手に矢城の隣に座った。
赤沼は他に急ぎの仕事があるようだ。

「ご用件をうかがいます」と、矢城が母娘に促す。

「弁護士さんにお願いするほどではないのかもしれませんが、どうしたらいいのかわからなくなりまして――」

母親が遠慮がちに話しだした。

娘の名は、吉野七海(ななみ)。
近くの公立高校に通っており、クラスは二年D組。
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