エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「自分で胸を押し当てておきながら、焦るのか? まったく危ないな。そんなことでは、また軽薄男に騙されるぞ」

矢城の視線はテレビに向いている。
真面目な報道番組に似合わない、忍び笑いを響かせていた。

(結局、いつものパターンで終わらせるのね……)

赤い顔で胸を隠しつつ、彼の拒絶を寂しく思う詩織であった。


矢城への愛しさが募り、ただの事務員という立場から抜け出せない日々に詩織は胸を痛めている。
その上、最近では矢城に避けられているような気がしてならない。

七海の件が一応の解決を見せてから二週間ほど経つが、仕事を終えた矢城が夜、ふらりと飲みに出かけるようになった。
一日おきだったり、連日だったり。
それが、今までと違う。

(私とふたりきりになりたくないということかな……)
そう感じて、詩織はへこむ。

六月の日は長く、十七時を過ぎても空にはまだ夕焼けの気配もない。
詩織は今、留守番中で、矢城と赤沼はそれぞれ担当する仕事で外出中であった。
赤沼の机で書類作成をしていても、ふと矢城の顔が浮かんで手が止まるのは困りものだ。

(余計なことは考えたら駄目。ただでさえ、のろまなのに……)
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