エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
赤ちょうちんの小料理屋に、焼き鳥、もつ煮込み、ラーメン屋。酔客の笑い声がさざ波のようにあちこちから聞こえていた。
それを聞き流しながら、矢城は無意識に眉間に皺を寄せる。

(詩織ちゃんの様子が変だ。友人と食事だと言って出かけたが、三日連続はおかしい。まさか、また悪い男に引っかかっているんじゃないだろうな……)

詩織は素直な分、騙されやすい。
その危うさに、ついつい余計な不安が膨らむ。

矢城がポケットからスマホを取り出したのは、迷子防止アプリで詩織の現在地を確認しようとしたためだ。
しかし、思い直してやめる。

(過保護だと、また赤沼に指摘されそうだ。詩織ちゃんは子供じゃない。いちいち口出しするのもな……。たとえ男と会っているのだとしても、俺にとやかく言う資格もない)

詩織の恋心を受け止めてやれないのだから……と思っているのに、矢城の不快感は消えない。
それがなぜかに気づいていても、あえて触れないようにし、「蒸し暑いからな」と矢城は全てを夏のせいにした。

矢城が入ったのは、三階建ての古びた商業ビル。
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