エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
矢城が昔話をしたいと言ったからか、ジュリアが懐かしい話を始める。

「あの時のこと、覚えてる? 嬉しかったわ……」

ジュリアが矢城に、心の性別が女性であることを打ち明けたのは、高校二年生の夏。
両親にも誰にも言えず、男性として暮らしてきたが、なぜか同じクラスになって四か月ほどの矢城に聞いてほしいと思った。

いや、なぜかではない。
矢城は何事にも動じず、同じ年齢とは思えない落ち着きと頼りがいを感じた。
誠実な人柄で、男女問わず人気もあった。
彼ならわかってくれそうだと、ジュリアは思ったのだ。

けれども、打ち明ける前は緊張した。
気味悪がられたり、話さないでほしかったと言われたりしたらどうしようという不安は拭いきれない。

矢城の反応はどうだったのかというと……。

『そうだったのか。これまで男扱いして悪かったな。もっと早く教えてくれたらよかったのに』
驚くことも戸惑うこともなく、サラリとそう言ってのけたのだ。

遠くを見るような目をして、ジュリアが嬉しげに言う。

「浩ちゃんは、私が本名で呼ばれるのが嫌だと言ったら、自分で愛称をつけたらいいとも言ってくれたのよね」
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