エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「まだ引きずっているのね。綾(あや)のこと」

矢城は琥珀色の液体を一気に喉に流し込んだ。
まださして薄まっていないので、喉に熱い刺激を感じるが、心の痛みをごまかしてはくれない。
無言でグラスを差し出すと、ジュリアがすぐにお代わりを注いでくれた。

「何年経ったって、罪悪感は拭えない。守れなかった非力な自分が嫌になる」
「浩ちゃんのせいじゃないのに、どうしてそこまで責任を感じるのよ」
「愛していたから、だな」

ニッと笑って見せたら、ジュリアに呆れ顔をされる。

「すぐそうやって茶化してごまかすのは、あなたの悪い癖よ。綾はきっともう、浩ちゃんのこと忘れてるわ。あなたもいい加減、忘れなさい」
「忘れてくれるのはありがたいな。だが俺は、戒めとして抱えていくつもりなんだよ」

矢城は頬杖をつきつつ、かつての恋人を思い出す。
仁科(にしな)綾。
高校の二年生の時に隣のクラスだった女の子だ。
清楚な雰囲気のある綺麗な顔立ちの大人しい子で、家庭科部に入っていた。

ある日、矢城は急に綾に声をかけられた。
『部活でクッキーを焼いたから、よかったら食べて』と言われたのだ。

< 148 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop