エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
二車線の道路沿い。どことなく鄙びた風合いのネオンがまばらに輝いている。
矢城は足を止め、詩織の手を離して向かい合った。

腹を立てているわけではないが、笑いかけてやれないし、気にするなとも言ってやれない。
矢城自身、気持ちの整理がつかず困惑している。

こんな気分になるのは、大人になって初めてかもしれない。
詩織を怯えさせたくはないので、視線を逸らした。

「怒ってはいないが……こっそり探るのはやめてくれ。詩織ちゃんがまた男に騙されているんじゃないかと心配だった。直接、聞いてくれたらよかったのに」
「聞いたら、教えてくれたんですか?」

チラリと視線を戻せば、驚きと期待のこもる目で見られていた。

(どうだろうな。はぐらかして終わりにしたかもしれない。触れられたくない、というほど傷が痛むわけではないが……)

綾の件は二十年近く前のことなので、傷口はとっくに瘢痕化している。
苦しみはあっても新鮮な血が溢れることはないのだ。
ただ、今後も戒めとして心に留め置くと同時に、今の綾が幸せに暮らしていることを願うだけである。

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