エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
万が一、渋滞に巻き込まれでもしたら時間切れとなってしまう。
その代わりに、「高井さんの自宅までの移動を、詩織ちゃんに詳しく教えてあげてくれ」と赤沼に指示をした。

「それくらい住所を見ればわかるでしょう。子供じゃないんですから。乗り継ぎもない電車一本です。しかも駅から徒歩五分ほど。それでも迷うとでも?」

相変わらず過保護な矢城に、赤沼は呆れているようだ。
詩織は苦笑しつつ、一応、自己弁護する。

「大丈夫です。その辺りは行ったことがないですけど、方向音痴ではないので迷いません。矢城先生はいつでも心配性なので……」
「浅木さんに対してだけな」

その指摘には嫉妬がこもっていたが、ため息をついた赤沼は、自分のスマホで地図アプリを開き、詩織に見せた。

「ここが降車駅で、この通りをまっすぐ。ここで曲がって茶色い外壁の五階建てのアパートの三階が高井さんの自宅だ」
「わかりました。ありがとうございます」

不満をこぼしつつも、赤沼は丁寧に教えてくれた。
そこには、矢城の指示に従っているだけではない、親切心が感じられた。
見た目のクールさとは違い、赤沼は優しい人である。

< 194 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop