エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
自分よりずっと年上の頼りがいを感じる男性といえば、どうしても小関を思い出してしまうからだ。
もう二度と甘い言葉に引っかからないという警戒心が、恩ある矢城にまで発動してしまう。

矢城としてはきっと、詩織の心を軽くしてあげたいという、優しさからの冗談なのだろうけど……。

「矢城先生にはとても感謝しています」

それだけ答えて丸盆を目の下まで引き上げたのは、困り顔を隠そうとしてのことだ。
矢城が椅子を回して、詩織に向き直る。
少しだけ焦った様子で「詩織ちゃん――」と呼びかけたら、赤沼が椅子を鳴らして立ち上がった。
詩織を背に隠すようにして、矢城と対峙する。

「先生はデリカシーというものを学んだ方がいいのでは? 若い女性にそういうからかい方は失礼でしょう。僕に対してならいくらでもどうぞ」
「いや、赤沼に熱い眼差しを向けられてもな……」

苦笑した矢城は正面に向き直り、「さて、仕事するか」と積み上げられた書類の山に手を伸ばす。
赤沼は自席に戻り、彼の背を見つめた詩織はホッとしていた。

(私が困っていたから、助けてくれたのかな。赤沼さん、ありがとうございます……)

赤沼は愛想がない。
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