エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
山田が悪党のような笑い声をあげているので、自分で外せないような細工がされているのだろう。

「警察呼びますよ」

冷や汗を流す詩織は、次の手段だとスマホを取り出した。
そこに山田の左手が伸びて、奪い合いになる。

どちらかといえば華奢にも思える体形の男なのだが、詩織より腕力があった。
奪われたスマホは後ろへ投げられる。
後部シートを通り越し、さらに後ろのトランクに落ちたスマホには、どうやっても手が届かない。

車はインターチェンジから高速道路に入ってしまった。
たとえシートベルトを外せたとしても、高速走行中の車からは降りられない。

両手が震えだしたその時、詩織のスマホが鳴った。
直感的に、電話をかけてきたのは矢城だと感じた。
届かないのはわかっていても、後ろを振り向いてしまう。

(矢城先生……)

ベル音は二十回ほどで切れたが、またすぐに鳴る。
まるで詩織の身に異変が起きているのを察知したかのように。

(助けてください……!)

思わず心の中で助けを叫んだが、「うるせぇ電話だな」と山田がラジオの音量を上げるから、救いのベル音が聞き取りにくくなる。
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