エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
そのうち、すっかり鳴らなくなってしまった。

詩織は落胆し、巨大な恐怖にのまれそうになったが、懸命に心を保とうとする。
矢城の元に無事に帰るには、自分でなんとかするより他にないのだ。

(矢城先生に頼っては駄目。守ってもらわなくても大丈夫だと言ったのは私だもの)

それは、矢城の古い友人であるジュリアの店でのこと。

かつての恋人を守れなかったことを、矢城は今でも悔いて自己嫌悪している。
そのせいで彼は新たな恋ができないのだと知った。

だから店からの帰り道で詩織は、しつこい雑誌記者に立ち向かったのだ。
自分の身は自分で守る。矢城が守らねばならないような弱い女ではないと主張するために。

(あの時、言ったことを嘘にしたくない。助かる方法を自分で考えよう……)

詩織は心を落ち着かせるために大きく息を吐いた。
それを山田が「諦めたのか?」と勘違いする。

「ここではどうあがいても降りられませんから。しばらく高速なんですよね? 暇なのでメイク直しをしてもいいですか?」
「随分、肝っ玉が据わってるな。それともなにか企んでいるのか? 携帯を二台持っているんじゃないだろうな」
< 202 / 245 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop