エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
彼がどうやってここまで追ってきたのかわからないが、詩織はやっと助けられた現実を飲み込むことができた。
恐怖と緊張から解放されて、涙があふれる。
なにより、矢城にまた会えたことが嬉しくてたまらない。

詩織も腕を回してぎゅっと抱きつきたかったが、まだ両手首の結束バンドを切られていないので叶わない。
外してと頼む前に、「ちょっと待ってて」と矢城に体を離された。

詩織の後方に向け、急に駆け出した彼。
振り向けば、逃げようとしていた山田が七メートルほど先で矢城に捕まり、うつぶせに地面に倒されていた。

相手はナイフを持っている、という注意はいらないようだ。
山田の手が届かない場所に転がったナイフが、車のライトを反射させていた。
後頭部を片手で、腰を膝で押さえられてもがいている山田が、言い逃れようとしている。

「誤解だ! 俺は迷子の女性を車に乗せてやっただけだ!」
「へぇ、東京の中心部からこんなところまで? 手首を縛ってナイフを突きつけてか?」

嘲るように鼻を鳴らした矢城は、声を低くした。

「寝ぼけたこと言うなよ。下手な弁明は俺の怒りに油を注ぐだけだ」
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