エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
(お母さんの介護をひとりで。大変なんだろうな。山田さんが逮捕されたら、確かにお母さんはどうなってしまうんだろう……)

前方に見える真っ暗なあの家の中で、寝たきりの母親が息子の帰りを待ちわびているのかと思うと、詩織は同情した。
もちろん、されたことを許せないという思いはあるけれど。

揺れ動く気持ちを抱えて、詩織は矢城に歩み寄る。

「先生のお力で、山田さんの罪を軽くしてあげることはできませんか……?」
そのように頼めば、矢城に深いため息をつかれてしまった。

「優しすぎるよ。そこが詩織ちゃんの魅力でもあるが、騙されやすいのは問題だ」

「借りるぞ」と、矢城が山田のズボンの後ろポケットから財布を抜き取った。
中から診察カードのようなものを出して、読み上げる。

「権正(ごんじょう)茂雄。山田じゃないようだ」
(えっ……?)

「権正……聞き覚えのある名だ。確か、五、六年前に家宅侵入と強制わいせつで懲役刑になったはず。他にも前科があったよな。なにが初犯でほんの出来心だ。刑期を終えて出所したら、早速犯行か?」
(ええっ……?)

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