エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織は胸を高鳴らせて菓子パンを取り出し、ひと口大にちぎって矢城の口元に持っていった。

「あっ……」

わざと詩織の指まで食いついて、矢城は「うまい」と笑っている。

(もう、そういうことするから私、ドキドキが止まらない……)

「詩織ちゃんも食べな」
「はい」

自分と矢城の口に交互にパンを入れて、くすぐったい甘さに浸る。
こうしている間は、矢城の口数が少なくても気にならなかったのに、食べ終えてからも続く無言の間に、詩織はそっと彼の顔色を窺った。

(疲れてあまり喋りたくないという心境なのかな。それとも、運転に集中したいということなのかも。でも、別のことを考えているようにも見える。なんとなくだけど……)

そういえば、警察署を出たところで、『考え事をしていた』と言われたことを思い出した。

(放り出してきた仕事のこと? 私を助けるためにスケジュールを狂わせてしまって申し訳ない……)

せめて矢城の思考の時間を妨げないようにと、それからは詩織も話しかけずにいた。

等間隔に並んだ首都高の街灯が後ろに流されていく様を、ただぼんやりと眺めている。
そうしていると眠気に襲われた。
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