エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
自分だけ寝るわけにいかないという思いで、詩織は睡魔に抗う。

けれども否応なく瞼は下がってきて、首がカクンと垂れた。
それと同時に、「詩織ちゃん」と呼びかけられ、ハッと目を開けた。

「ごめんなさい!」

焦って謝れば、矢城の視線がチラリと詩織に流され、すぐに前方に戻された。
「聞く前に断るの?」と、よくわからないことを言われる。

「え? あの、眠りそうになったことを謝ったんですけど……」
「ああ、そっちか。日付も変わったし眠いよな。着くまで寝ていなよ。疲れただろ」
「大丈夫です。それより今、私になにを聞こうとしていたんですか?」

せっかく声をかけてくれたのに、という思いで眠気は完全に吹き飛んでいる。
矢城は逡巡するように数秒黙ってから、静かな声で言った。

「俺と結婚しないか?」
「……あ、あの、今、なんて?」

詩織は目を丸くして問い返した。
プロポーズされたような気がしたが、聞き間違いではないかと思ってしまう。

交際を始めてわずかひと月ほど。
加えてとてつもない迷惑をかけた後だから、そんな夢みたいなことがあるわけないと、自分の耳を疑った。

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