エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
詩織から無理に事情を聞き出すことはせず、そう言って笑い、背中をバシバシと叩いて励ましてくれた彼女に、詩織は逞しさと優しさを感じたのだ。

「ところで、細貝さん」

書類を掲げている腕が疲れたのか、片方ずつブラブラさせながら、矢城がなんてことない口調で問う。

「今日の面接はどうだった?」

途端に細貝がハッとして、「そうだった」と慌ててスマホを出している。
形ばかりにみんなの輪から外れると、青い顔をしてどこかに電話をかけていた。

「あの、本日十五時に御社に面接に伺う予定でした細貝と申します。実はアクシデントがありまして――」

細貝は先週、食品工場をクビになり、現在は求職中である。
面接を受けては落とされてを繰り返し、今日も面接予定があったようだが、美緒の学校から呼び出されたため行けなかったらしい。
連絡を入れるのも忘れ、すっぽかしてしまったようだ。

「あ、あの、後日もう一度チャンスを……そうですか、はい。ご迷惑をおかけしました……」

どうやら断られてしまったらしく、電話を切った彼の口から、深いため息がこぼれていた。

「お父さん、また失敗? 駄目だねー」と、美緒が笑う。
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