エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
自信がついたとまでは言えないが、外出に対する不安や恐怖は大分解消されていた。
代わりに胸には、達成感が広がる。

(矢城先生の優しさに甘えて、事務所にこもってばかりじゃいけないもの。これからは外に出よう。少しは先生の役に立ちたい……)

往路ではシャッターを下ろしていた店々が、今は開店していた。
洋菓子店から甘い香りがして、惣菜店からは揚げ物の匂いがする。
道行く人々は、通勤から買い物客に変わっていた。

詩織がパン屋の前に差し掛かろうとしたら、パンの入った袋を手にした女性がふたり、店から出てきた。
ふたりとも乳児を抱っこ紐で抱いている。
仲のいいママ友といった関係だろうか。
会話を弾ませている女性のひとりが、何気なく視線を詩織に振り、ハッと目を見張った。

詩織はギクリとして俯き、彼女たちの横を通り過ぎる。
呼び止められはしなかったが、興奮気味の会話を聞いてしまった。

「今の人、浅木清良じゃない? 不倫で総叩きにあってた、あの女優!」
「マジ!? 顔見とけばよかった。この辺りに住んでるのかな。謹慎後に復帰すると思う?」
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