エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「無理でしょ。イメージ悪すぎて使えない。このまま引退でいいんじゃない? ざまあみろ、だわ」

子育て中の主婦層は特に、詩織に対して非難の感情が強いのかもしれない。
夫に不倫をされた側の女性と自分を重ねてしまうから。
詩織に聞こえても構わないと言いたげな会話が、容赦なく背中に突き刺さる。

逃げたいのはマスコミだけじゃない。
こうした声に耐えられるほど、詩織の心は回復していない。
胸が痛くて苦しくて、詩織の瞳に涙が滲んだ。

歩調を速め、法律事務所がある方へと道を折れようとしたら……「詩織ちゃん」と声をかけられた。
それは少女の声で、振り向けば、ランドセルを背負った美緒である。

「美緒ちゃん? 学校は?」

小学四年生に進学した美緒は、今朝もいつも通りの時間に登校していった。
今は十時を過ぎたところで、帰宅には早すぎる。
駆け寄ってきた美緒は、詩織の隣に並んで歩きだし、なんてことないように言う。

「なんか熱くて保健室行ったら、三十八度だった。今日の給食、プリンなんだよ。食べてから帰るって言ったのに、先生が駄目だって。ケチだよね」
「三十八度!?」

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