エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
(今日の美緒ちゃんの帰りは十六時頃だよね。おやつにコロッケっておかしいかな。ここのコロッケが好きだと言ってたから、食べさせてあげたい……)

美緒は差し入れを『お父さんの分』と言って半分残しておく優しい子である。
なので細貝の分も買おうと、詩織は店内に足を進めた。

「いらっしゃい」
「コロッケください。六個……いえ、十五個」

数を増やしたのは、矢城と赤沼が小腹が空いた時に食べるかもしれないと思ったためだ。
そうなるとナワポンにもあげたくなる。
ナワポンは時々、皆に夕食を作ってくれたり、この前は詩織に珍しいタイのお菓子を差し入れてくれたりもした。
なにかとお世話になっているので、ひとつ八十円のコロッケで申し訳ないが、お返しをしたいと考えた。

にこやかな店員の中年男性は、詩織が誰であるかに気づいていないようだ。
手際よくコロッケを袋に入れながら、マスク姿の詩織に「花粉症?」と問いかけてくる。
その何気ない会話は、通常の生活に戻れたような安心感を与えてくれて、詩織は嬉しくなる。
代金を支払い、ペコリと会釈して店先を離れると、空を仰いだ。

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