エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
今日は曇り空で肌寒い気候だが、抱えている総菜屋の紙袋は温かい。
自然と頬が綻ぶのは、そのせいだけでなく、安心できる法律事務所にもうすぐ帰りつくからであろう。

気を緩めていたその時……急にシャッター音がして、ハッとした。
カメラ片手に近づいてきたのは、記者風の若い男だ。

「浅木清良さん、随分たくさんコロッケを買いましたね。同棲中の恋人と食べるんですか?」
「ち、違います」
「新恋人は弁護士。職を失っても金に困ることはありませんよね。美人は強いなぁ」

詩織はたちまち恐怖にのみ込まれる。
しばらくマスコミの姿を見ていなかったから、油断があったのかもしれない。
矢城を同棲中の新恋人だと書かれたら、迷惑をかけてしまうと青ざめた。

その恐怖は、子連れの若い女性ふたり組に後ろ指をさされた時の比ではない。
ガクガクと震える足を必死に動かして逃げようとしたら、転んでしまった。
両膝を擦りむいてしまったが、それよりも心の方が遥かに痛い。

すぐに立ち上がって走り出したけれど、男はぴったり横についてきてしつこく質問を続ける。
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