エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
心配させてはいけないと、詩織は慌てて笑顔を作った。

「そこで転んだんです。買ったばかりのコロッケを潰してしまって……注意力が足りなくて恥ずかしいです。あ、書類は無事ですから」

ショルダーバッグの中から茶封筒を取り出そうとしたら、矢城の腕が背中と膝裏に回され、横抱きにされた。

「キャッ……先生!?」

驚く詩織を抱えた矢城は、無言で事務所内を進み、応接用のソファに詩織を下した。
ストッキングが破れてあらわになった両膝に、うっすら血が滲んでいる。
依然として険しい面持ちの矢城は、救急箱を出してきて、手当てしようとしてくれる。

「先生、あの、自分でします」

消毒液に伸ばした手を、矢城に掴まれた。

「俺がやる。その間に話してくれ。なにがあった? 涙の跡が乾いていないよ。マスコミに追われたのか?」
「あ……」

全てお見通しのような矢城のまっすぐな視線。
それを避けて、詩織はうつむいた。

ビリッと音がしたのは、手当てがしやすいように、矢城がストッキングの破れ目を広げたからだ。
詩織の鼓動が跳ねる。
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