エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ハッとして「すみません!」と謝る。

「機密というわけでもないんだが……。今夜は駄目だけど、そのうち見せることになる」

含みのある言い方をして、矢城は無糖の缶コーヒーをひと口飲んだ。
この時間にコーヒーとは徹夜する気なのかと心配したが、どうやら違うようだ。
両手を頭の後ろで組み、椅子の背もたれに寄り掛かった矢城が自嘲気味に笑う。

「この年になると、寝ようとしても寝つけない夜がある。俺もじいさんになったな」
「先生はまだ三十代です。充分に若いと思います」
「そう? それなら二十二歳の純朴な女の子を口説いても許される? 詩織ちゃんが抱き枕になってくれたら、ぐっすり眠れる気がするんだよな」

ウインク付きの矢城の言葉に、詩織は目を丸くする。

(冗談……よね?)

どこか面白がっているような矢城の瞳。
本気で口説いている様子はないので、からかわれただけだと理解し、弾んだ鼓動はすぐに落ち着いた。
けれども、勝手に熱くなった頬の赤みは簡単に引いてくれない。

矢城がカタンと椅子を鳴らし、体を背もたれから離した。
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