エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
ひげも剃り、ジャケットの襟には弁護士バッジがつけられていた。

有能かつ美麗な青年弁護士の姿に見惚れそうになりながらも、詩織は自分が同行するということの不思議を深めていた。

(クライアントのところへ行くのかな。それとも裁判所? 私じゃなく、赤沼さんを連れていった方がいいのに、どうして……)

矢城は黒革の手提げ鞄に、てきぱきとノートパソコンや書類を入れている。
そうしながら、「詩織ちゃん、今日は俺と一緒な」と、何気ない口調で指示をした。

「はい……」

忙しそうな矢城にあれこれ質問するのは憚られたので、服装についてのみ尋ねる。

「私も着替えた方がいいでしょうか? 落ち着いた色のオフィススーツは持っていないので、なにを着たらいいのか……」

前に住んでいたマンションを追い出されるようにして出てきた時、全ての衣類を持ち出せなかった。
上下揃ったスーツはドラマの撮影で使ったオフピンクのものしかない。
撮影時に少し汚してしまったので、申し訳なく思い買い取ったのだ。
今着ている服はいつもの紺色タイトスカートとブラウスで、ジャケットを羽織るくらいしかできない。

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