エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
「確信犯でしょう。結局、全ては彼女のためだ。先生はズルい男ですね」

嬉しいのか悔しいのかわからない言い方をした赤沼に、矢城がククと笑う。
「留守を頼むな」と言い置いて玄関を出ていく。

詩織は赤沼に会釈すると、慌てて矢城の後を追った。
伊達眼鏡とマスクを着用し、矢城と並んでタクシーの後部座席に乗り込む。

矢城が指示した行き先は、都内のMICE。
企業の展示場や講演会、種々団体の会議などで使われる複合施設だという。
走り出した車内で、詩織は聞きたかったことを口にする。

「先生、今日はどのような仕事ですか? 赤沼さんではなく私でも、お役に立てるのでしょうか?」

矢城は一拍置いてから、詩織を見てニコリとした。

「今日は詩織ちゃんが適任なんだよ。内容はここでは話せないが、難しいことはない」
「そうですか……」

大勢が集まる場所でマスクを外して挨拶しなければならなかったらと、詩織は心配していた。
それを表情には出していないつもりでいたのに、矢城に「大丈夫」と言われた。

「俺の隣に座っているだけでいい仕事だよ」

矢城が前を向いたため、視線が合わない。
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