エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
穏やかで、どこか掴みどころがなく、それでいて頼りがいを感じさせる弁護士。それが矢城である。
そんないつも通りの彼のように見えて、なんとなく様子が違う気もした。

端整な横顔には信念や決意といった、曲げられない頑固さが感じられる。
これ以上質問しても曖昧にかわされるだけのような気がして、詩織は口を閉ざした。

疑問は解けないまま、三十分ほどで目的地に着いた。
六階建てでグレーの大きな建物に、スーツ姿の人たちが出入りしている。
ホテルとは違い、ロビーは機能重視のスタイリッシュな設えで、本日の催しもの一覧が自動扉を入ってすぐの場所に掲示されていた。
パッと見た限り、矢城法律事務所に関係がありそうなものはない。

「詩織ちゃん、こっち」

矢城は勝手知ったる様子でエレベーターホールに向かう。
詩織は急ぎ足でついていき、エレベーターで五階へ。

長い廊下を進んだ先で、矢城は足を止めた。
『会議室26』とプレートをつけたグレーのドア前である。

周囲に似たようなドアが等間隔に並んでおり、大きなイベントホールだけでなく、個人に向けた貸し会議室もたくさん備えた建物なのだと詩織は理解した。

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