エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
小関が観念したところで、女性弁護士が口を開いた。
葉山に顔を寄せるように、ヒソヒソと話す。

「慰謝料の返却及び請求を求められた件はどうしますか? 小関さんも認めていることですし、事実関係を争うより減額交渉した方がいいでしょう。矢城弁護士は手ごわいです。かつては大手でニュースに載る規模の裁判を担っていた人です。なぜか今はすっかりマチベンですが……。裁判にならないよう私が交渉します」

会議室は静かなので、囁き声でも密談にはなっていない。
矢城にも誉め言葉が届いているようで、くすぐったそうに顔をしかめて首筋を掻いていた。

詩織は自分の問題から離れ、矢城を想う。

(そういえば赤沼さんも、矢城先生は小さな案件で甘んじる弁護士ではなく、以前のように大きな裁判で活躍する姿がみたいと言っていたよね。先生はどうして今のようになったんだろう……?)

世間が注目する裁判を担当して名声を上げたい弁護士は、大勢いると思われる。
その機会も実力もあったというのに、矢城は今、下町のような場所でひっそりと事務所を構えている。

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