エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
女性弁護士も一礼してから去り、静かな会議室にふたりきりになった。

詩織の方に向き直った矢城は、ネクタイをくつろげて口の端を上げる。
詩織は半ば呆然としていた。
いや、拍子抜けと言った方がいいだろうか。

ここに着いて、わずか四十分。
絶望を味わった不倫騒動が、こんなにあっさりと解決に向かったことが信じられない。
ぼんやりしている詩織の顔を、「どうした?」と矢城が覗き込んだ。

「うまくいったんだから喜んでいいんだよ。どうしたら裁判せずに君の名誉を回復できるかを考えたんだ。葉山さんのことも調べてね。あのはっきりした性格なら味方してくれるのではと企んでのことだったが、予想より簡単だったな。交渉するまでもなかった。葉山さんに感謝しよう。それじゃ、帰って……おっと」

矢城の言葉を聞きながら強い緊張が解けていき、足に力が入らなくなる。
崩れ落ちそうになった詩織を、矢城が正面から抱きとめてくれた。

「す、すみません。力が抜けて……」
「無理もない。なにも言わずに連れてきて悪かった。怖かったよな。詩織ちゃんはよく耐えてくれた」
「矢城先生……」

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