エリート弁護士は、溢れる庇護欲で年下彼女を囲い込む
謝るのはむしろ、臆病だった自分の方だと詩織は思った。
依頼がないと動けないと言っていたのに、どうしたら詩織を救えるのかと考えてくれた矢城には感謝しかない。

「ありがとう、ございます……」

お礼の言葉が涙で震える。
まだひとりで立てそうにないが、涙で彼のスーツを汚してしまうと気にして離れようとしたら、大きな手を後頭部に回された。
軽く押されて、顔をスーツの胸に戻すことになる。

「役得だな」と、矢城が茶化したように言う。

それはいつもの冗談で、矢城に下心はないのだろうけど、ウブな詩織は鼓動を弾ませた。
これまでと違うのは、赤くなる頬や速まる動悸に困るだけでなく、くすぐったい喜びも湧いていることだ。

(矢城先生の腕に守られていると、嬉しく思うのはどうして? もしかして私、先生のことが……)

ドキドキと高鳴る自分の心音を耳にしながら、矢城の背に腕を回してしがみついてみた。

「もう少し、このままでもいいですか……?」

大胆なことをしていると耳まで火照らせて問いかけたら、「もちろん」とクスリとされた。

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