都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「……仁奈」


キスの合間に色気を漂わせる声で名前を呼ばれた。


「寝る前にもっかいしよ」


そう来ると思っていたのに、佐久間の誘う時の声には強く否定ができない。
もはや佐久間の提案を前に逃げることなど不可能だ。

抵抗なんてする隙もなく快楽の渦の中に飲み込まれて、なし崩し的に身体が繋がる。
結局好きな人の前では、この快楽と独占欲には勝てない。


「すっげー締めつけ、なんかさっきより感じてる?」

「ちが、う」


奥を突かれる度あふれる感情。それを悟られたくなくて顔を背ける。
すると佐久間は覆い被さるように私に抱きついてきた。


「あーあ、仁奈は俺がいないと生きていけないね」

「っ、やだ……」

「なんで“やだ”?素直に頷けばいいのに」


嘘をついたのは私の中にひとかけら残った意地のせい。
だって認めたらさっきの女の子の二の舞になった時に対処しきれないから。
好きなのに好きと言えないこの状況が苦しい。だから快感にすがるしかない。

佐久間に求められ、疲れて眠ったその夜は夢も見なかった。
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