都合のいい女になるはずが溺愛されてます
その案件は少し遅れたけどなんとか13時に間に合って、その日は特にトラブルなく仕事を終えた。
退勤しようとしたら後ろから誰かに呼ばれる声がした。
もしかして仁奈?と思って振り返ったらさっきの新卒が走ってきていた。

なんだ、仁奈じゃねえじゃん。


「あの、佐久間さん……キャッ!」


その女は目の前まで走ってきたかと思うと、何も無い床の上でつまずいてバランスを崩した。
顔面から床とぶつかりそうな勢いだったから思わず手が出て受け止めた。


「あ、その、すみません……」


顔を真っ赤にして俺から離れるそいつ。
やっぱ鈍くせぇな、同じ新卒なのに岡田が天使に見える。
マジで営業部に配属されたのが岡田で良かった。
あいつはちょっとクセあるけどこの新卒に比べたらかわいいもんだ。


「あの、先ほどは失礼しました。今後は同じ失敗がないように気をつけます」

「別にいいよ、次は気をつけてね」

「は、はい!」


一応さっきのミスを気にしてたのか謝ってきたけどなんか鼻につく。
けどとりあえず早く帰りたかったから愛想笑いしながら「お疲れ様」と声をかけて背を向けた。
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