都合のいい女になるはずが溺愛されてます
だけどそれから思いのほか部長と話が盛り上がった。
初孫かわいい、の話から娘さんの話に続き、今年銀婚式の奥さんとの話題に移った。
愛妻家で有名な部長のエピソードを聞くのは楽しい。

一途っていいなぁ。気の多い佐久間は部長の爪の垢を煎じて飲んだほうがいい。


「部長、お酌します」


仕事の話そっちのけで楽しくお喋りしていたら、ビール瓶を持った女の子が2人現れた。
ああ、この子たち新入社員か。新卒ってだけあってメイクバッチリで若いな〜。


「大丈夫だよ、遠藤さんにお願いしちゃってるから。気をつかってくれてありがとね」


部長が笑顔でやんわり断ると「あ……」と目を見合わせる。
そして目を輝かせて佐久間を見た。


「じゃあ、佐久間さんのお酌させてもらっていいですかぁ?」


その態度、ハナからそっちが狙いか。
新入社員たちは了承を得る前に佐久間を囲んで座った。

はじめは真面目に仕事について聞いていた2人だけど、次第にお酒が回ると佐久間にわざとらしいボディタッチを始めた。


「佐久間さんってぇ、彼女いるんですかぁ?」


さらに下心丸出しの発言。
しかし佐久間はこういうシチュエーションを何度も経験している。動じるはずがない。

佐久間、なんて答えるんだろう。さすがに初対面の子にクズみたいな発言はしないよね──



「ああ、彼女?いるよ」



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