都合のいい女になるはずが溺愛されてます
その後の1時間は本当に地獄だった。
気分はお通夜。そんな歓迎会じゃ楽しめるわけない。

お開きになったのは午後10時。私は一番最初に店を出た。

早く、早く家に帰りたい。
家に残ってる佐久間の物を全部捨ててあいつの事なんて早く忘れたい。


「仁奈」


そう思うのに幻聴まで聞こえてくるなんてどうかしてる。
そんなに飲んだっけ?酔い回ってるのかな。

うん、酔ってたのは確か。あんなクズを好きになりそうだったんだから。
バカだな私、笑えてきちゃった。

笑いながら減速してついに立ち止まった。
止まったら急に苦しくなってきて、道端にしゃがみこんだ。

よかった、人気のない路地で。
誰かいたらきっと頭がおかしいって思われてた。


うずぐっていると足音が近づいてきた。
誰か人が来たみたい、早く立ち上がらないと。


「……やっと追いついた」


急に辺りが暗くなって上から声がする。
頭上からため息が聞こえて耳を疑った。
これも幻聴?もしかしてもう、夢の中?


「……佐久、間?」
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