都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「仁奈ん家行きたい。仁奈と一緒のベットで寝たい」


佐久間は駄々をこねる子どもみたいに突然しゃがみ込んだ。
こんな突拍子もないことするくらい酔っ払ってるのに、よく私のこと追いかけてきたな。


「声が大きいです、分かったから早く立ってください」

「泊まっていいってこと?」

「そういうことです」

「やった、久々に仁奈ん家行ける」


へにゃ、と笑った佐久間にビックリして手を離した。
母性をくすぐられるような笑い方。その笑顔は初めて見た。


「しゃがんでる場合じゃねーや。早く帰ろ」


不意打ちを食らって驚いた。
さらに佐久間が立ち上がった拍子に腰に手を回されてびっくりした。

普段なら外でこんなこと絶対しないのに。


「仁奈の家どっち?」

「方向感覚分からないくらい酔ってるんですね」

「うん、今は仁奈がいないとなんにもできねえの」


誰かに見つかったらと焦るのに佐久間はいつもにまして上機嫌。
店からそんなに離れてないし、職場の人に見つかったらどうするつもりだろう。


「つーか俺、あんなグイグイ来る女苦手〜」


歩き出した佐久間はいきなり愚痴りだす。


「あの新卒の子たちですか?」

「そう、学生気分抜けてねえ感じがだるかったー。
しかもなんで俺ばっかりに構うわけ?もっと上のお偉いさんに挨拶いけよ」

「まあ、佐久間さん顔は良いですからね、顔は」

「顔もいい、だろ?」


顔は、と強調したのに自信満々に笑うものだからツッコむ気も失せる。


「はぁ?なんとか言えよ。ベットじゃあんなに素直なのにつまんねー」

「だから、声でかいですって!」

「あは、それそれ。仁奈はそうでないと」

「……意味わかんない。今日は佐久間さんと絶対しないですからね!」

「うん、今日はしなくていいや。代わりに一緒にお風呂入ろ」


かなり酔ってる佐久間はデリカシーがまるでない。
何考えてるのか余計分からないや。
でも、見上げた佐久間の横顔は心なしか幸せそうだった。
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