都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「あーー、疲れたぁ」

「おっさんくさ」


湯船に浸かって一息つく佐久間に一言呟いた。
さっきから冷静になれなくていちいち佐久間の言動に噛み付いてしまう。

私は佐久間の足の間に体育座りで浸かっている。
狭い浴槽だからどんなに気をつけていても身体が当たる。


「んー?仁奈ちゃんなにか言った?」

「きっと空耳です」

「ふぅん、てか緊張してる?なんで?」

「してないです」


後ろから顔を覗かれて顔を背けた。
なにやってるんだろう私、こんなリアクションしたら緊張してますって言ってるようなものじゃん。


「……ずるいよね、仁奈は」

「なんにもずるいことしてません」

「かわいいもん、ずるいよ」

「っ……」


耳元で囁かれても反論ができない。
絶対からかってる、反応を楽しんでるだけなのに。
真に受けちゃだめって分かってるのに。

きっと同じような言葉、いろんな女に言ってきてるはずだから。動揺しちゃだめ。



「仁奈以外切ろうかな」



と、気合を入れた瞬間に脈絡もなく信じられないことを言ってくるものだから思いっきり動揺した。
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