都合のいい女になるはずが溺愛されてます
「ねえ、仁奈につねられたところまだ赤い」


スーパーに入ってカゴを取ったら、佐久間が手の甲を見せてきた。
確かに若干ピンク色になっているけど、ビンタされて手跡くっきり残ってたあの時よりいい。


「白井さんのビンタよりマシだと思いますが」

「あー、あれはマジで姉ちゃんのビンタより痛かった」

「なんでお姉さん?」

「俺の姉ちゃん、元バレー部なの。
手首のスナップが効いたビンタが強烈だったの覚えてるけど、あいつはそれより凄かった」


6個上のお姉さんにビンタされるってよっぽどだ。
唐揚げ用の鶏肉を選びながらそう思った。


「ちなみにお姉さんにどうしてビンタされる羽目に?」

「俺が高校の時、姉ちゃんの後輩に二股かけたのが原因」

「その時からクズなんですね」

「クズっていうか、飽き性?
ひとりの女に誠実に向き合うこと自体めんどくさい」

「そういうのクズって言うんです」

「今は仁奈だけだから違います〜」


飽き性でめんどくさいと言いながら、私だけとはいささか信じがたい。
いつか私にも飽きる日が来るのだろう。
こうやって客観的でいられるのも時間の問題かもしれない。

いざ振られたら腹立つだろうし、私も佐久間の記憶に残るビンタをしてやろうと思う。
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