都合のいい女になるはずが溺愛されてます
佐久間の車に揺られて目的地に向かう。
車内に流れる洋楽を口ずさみながら佐久間はご機嫌だった。

でも慣れない車の中で居心地が少し悪い。
それに私服の佐久間は2割増でカッコイイから目のやり場に困る。


「車、持ってたんですね」

「あれ、仁奈乗せるの初めて?」


気を紛らわすために話しかけたらチラッと私を見てきた。
え、初めてですけど。誰と勘違いしてるの?


「初めてです」

「ごめんって、誰かと勘違いしたわけじゃねーから」


顔に出したつもりはないけどバレてた。


「最近仁奈としか一緒にいないから、もうとっくの昔に出かけてた気がしただけ」

「だから、別に何も言ってないので気を使わなくていいですよ」

「えー?『モヤモヤしてます』って顔に書いてあるから無視できない」

「……そんなに顔に出てます?」

「俺、仁奈のことよく見てるから」


前を見ながらそう言った佐久間だったけど、次の瞬間口元がニヤ、と綻んだのが見えた。


「昨日も寝顔マジ笑った。白目剥いて完全にホラーだった」

「なんで見るんですか、寝顔覗いてくるのほんと嫌いです」

「起きたあとのリアクションもおもしろいからやめられないよね」

「やめてください、嫌なのは嫌です」


ぷいっと窓の方を見たら佐久間は「今度カニ奢るから許して」と言ってきたので仕方なく許してやった。
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