エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
『あっ、あ、そう! もう、あんた付き合ってる人がいるとか全然言わないから!』
「え、そんなん、親に言わないでしょ恥ずかしいし……」
電話の向こうで、母の声がとても弾んでいる。どうやら、喜んではいただけているらしい。
『いつから? いつから付き合ってるの? どんな人?』
「え、えーっと……あ、お医者さん。病院の」
『お医者さんっ!? あ、もしかして昔の家庭教師の子?』
「その、後輩さんです! そのつながりで知り合ってね、あの、付き合ってから……」
伊東先生のことを母が覚えているようで、ぎくりとした。彼氏として紹介していなくて良かったが、ひやひやしてしまう。
焦ってしどろもどろになっている私の肩を、大哉さんがとんとんと叩いた。見ると、電話に出る、と手でジェスチャーをしてくる。
私は、声が母に聞こえないようにスマホの送話口を手で押さえた。
「大哉さん、いいの?」
「ああ。その方が手っ取り早い」
……い、いいのかな?
確かに色々言い訳するのは、私はあまりうまくない。送話口から手を離して再び耳に当てる。
「あのね。お母さん、彼が電話代わるって……」
『……ひえっ? ほんとに? ちょっと待ってドキドキする!』
きゃあきゃあと言いつつ、拒否はされなかったので、大哉さんにスマホを渡した。
「お電話代わりました。高野大哉と申します」
まったく緊張した様子もなく、落ち着いた声で彼が話し出す。寧ろ母の声の方が、賑やかに聞こえてくるくらいだ。さすがに、何を言っているかまではわからないが。