エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

「はい。……ええ、そうです。将来を意識したのは最近なのですが、出会ったのはもう五年ほど前のことで……」

 あ。すごい。嘘をついてないのに、まだお付き合いして間もないことを誤魔化してしまった。

「雅さんと、結婚させていただきたいと思い、ぜひご挨拶に伺わせてください」

 挨拶の目的まで、きっちり話してしまって、これでもう用は済んでしまった。これでは、実際会う時はもう結婚の時期など具体的な話をする流れになっているも同然だった。
 それからいくらか話をして勤めている病院まで明らかにして、彼は通話を切った。

「はい。挨拶に伺う日は、定休日の水曜ならいつでもいいそうだから、日を調整して改めて連絡することになった」

 ぽん、と手のひらの上にスマホが戻ってくる。

「いいんですか? 平日……私は有給があるので、十日前くらいに申請すれば休めますけど」
「確実に空けられるように調整する。ただ、緊急があった場合はどうしてもそっちが優先になるけど、それも説明したから大丈夫だ」

 スマホを手に、なんだか呆然としてしまう。

「本当に、結婚するんだ……」
「実感が湧かない?」
「いえ、今噛みしめているところで……」

 あんなに悩んでいたこの数日が嘘のように、着々と話が結婚に向けて進んだ。両親に連絡をしたからか、尚更実感が込み上げてくる。
 

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