エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「そうですね、ちょっと、色々……心当たりがあります」
思えば、伊東先生が冷たくなった頃から、考えないようにはしていたけれどずっと不安は抱えていた。そこにあの別れの衝撃があって、それから食事がまったく喉を通らなくなった。
今は持ち直してきているけれど、それでもすっかり元通りとはいえない。ストレスもあったし、どうして妊娠に違いないなんて思い込んだのだろう。
「すみません、狂うことなんてめったになかったから、もうてっきり……」
「勘違いするのはよくあることよ、あなただけじゃないわ」
明るく笑い飛ばしてくれるけれど、私は顔から火が出るくらいに恥ずかしい。
「生理は、少し様子をみましょうか。ずっと戻らないようなら明らかに異常だからね、もう一度診察に来るように。高野先生も気にかけてあげて。生理が来ない方が楽だからって、軽くみる子もいるからね」
「わかりました」
すっかり旦那様認定で、大哉さんが竹本先生に言われていた。彼はどこか、それすらもうれしそうだ。
「ま、あまり落ち込まないように。若いんだからまだまだこれからだし」
そうなのだ。妊娠かもと最初に思った時はあんなに不安だったのに、今の私は間違いだったと聞いて、ひどくがっかりしていた。それが自分でも不思議なのだが、戸惑いながらも数日、大哉さんとあれこれ相談して先に進もうとしているうちに、私は母親としての心の準備も始めていたようだ。
男か女か、つわりはいつ頃来るだろうか、予定日は。そんなことばかり考えて、いつのまにかすっかり母親気分だった。