エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「ありがとうございました」
お辞儀をして診察室を出ると、病院の出入り口の方向へとふたりで歩く。
「……大丈夫か?」
私を気遣う大哉さんの視線と言葉が、ありがたい反面自分が情けなくなってきた。
「はい……というか、もう、本当にごめんなさい」
あんなに狼狽えて、大騒ぎしたのはいったいなんだったのか。大哉さんに妊娠疑惑を告白するまでの私の覚悟は、結構悲壮なものだったし大哉さんにまた責任を背負わせてしまうと思って泣きそうだった。
この一週間はなんだったのか。
脱力してよろよろと歩く私の手を、大哉さんが握ってくれる。しばらくそのまま歩いていて、ハッと気付いた。
「あっ、手!」
「うん?」
あまりにも自然に繋いでいたので、慌てて離そうとしたけれどなぜか逆に強く握り返される。
出口までの間、私を少しでも励まそうとしてくれているのだろうけれど、職員に見られて恥ずかしいのは大哉さんの方ではないだろうか。
すぐ隣を歩いているから、繋いでいる手はそれほど見えはしないと思うが、それでも気になる。
「周りの人に見られますよ」
「別にいい。それより、なるべく早く帰るから家で待ってて」
今日は元々、診察後は大哉さんのマンションに泊まる予定になっていた。
「……はい。ご飯作って待ってます」
「俺も落ち込んでるから。ふたりで励まし合おう」
そう言いながら、繋いだ手の指で私の手の甲をするすると撫でる。甘えるような仕草は、逆に私を甘えさせているのだと彼はわかってやっているのだろうか。
確かに今日は、お互いに甘やかし合う時間が必要かもしれない。そう思って私も、彼の手を握り返した。