エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「素っ気なく……」
手にしたクロワッサンのたまごサンドを見つめつる。
どうすれば素っ気ない態度を取れるのか、想像してみたがあまり良いこととも思えなかった。まるで試すみたいで、悪いことをしている気になりそうだ。
そして何より、今の状態で私まで素っ気なくしたら、本当にずっと会えなくなりそう。
ふっと頭を過った考えが、無性に不安を煽って胸の奥が重苦しくなる。その苦しさを誤魔化すようにして、笑って顔を横に振った。
「忙しい時にそんなことされたら、私ならしんどくなると思うし」
「それはそうだけど……はあ……しかたないか。雅はそういう駆け引きするタイプじゃないもんね」
「思ってた結果と反対になったら悲しくなるでしょ。そういうの怖くて無理」
笑いながら冗談交じりに言うと、彼女も苦笑する。
「ま、雅の聞きたかったことを言うと、伊東先生は忙しくしてるわよ。私もそんなに知らないけど」
「そっかあ」
それを聞いて少しほっとした。だけど、それがあまりよくない意味で自分が不安を抱えている証拠だとわかってちくりと罪悪感を覚える。
結局、信じたいと思っているだけで。
彼の気持ちが離れているわけではないのだと、そう思える情報が欲しいのだと気が付いた。
「毎年のことだけど、新人が入ったら仕事ももちろん、しばらくは手間が増えるし。加えてこの時期は各部署ごとに歓送迎会するし、関連する医師は当然お声がかかるし、人気がある医師は無関係のとこからも呼ばれたりするしねー。伊東先生とか高野先生とか」
「やっぱり人気あるんだ」
「若くてイケメンの医師なんてそりゃあ。来れるかどうかはともかく声だけかけて損はないってノリでお誘いは多いわよ」
それを聞いて、テーブルに突っ伏してしまいそうになった。
「あああ……私も医療関係の資格取ったら良かった……」
「一緒に働きたかったって?」
「うん」
そうしたら、不安も少しは減ったかもしれない。