エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「社内恋愛みたいなのも、何かあったときにしんどいと思うけどね」
サチがぼそっと呟いた内容が、一瞬酷く実感のこもったものに聞こえ、彼女の目を見て首を傾げる。
「確かにそうだけど、わかれる時のことを考えて相手を好きになるわけじゃないし、難しいね」
「まったくだわ。気にしない図太い神経のやつもいるけどね」
「なんかあったの?」
やはり、刺々しい。
どうしたんだろう。久しぶりに会ったというのに私の話ばかりになって、後悔した。彼女だって話したい出来事が何かあったかもしれない。サチは私よりもずっとしっかりしているイメージだから、いつもつい甘えてしまう。
しかし、サチは私と目が合うと苦笑いをして「なんでもない」と肩を竦めた。心配だったが、彼女は次に話の方向を変えてしまう。
「まあ、資格を取っとくのは今からでも間に合うんじゃない?」
「うん、私もちょっと考えてて。あ、直樹さんのことだけじゃなくてね。もっと再就職に繋がりやすい資格とっとけばよかったなあって」
「派遣だから? 別にいいじゃない、派遣でも評価されたら実績になるでしょ?」
「それはそうなんだけど……」
簿記とMOSは取ったけれど、そう珍しくもない。雇用側から重宝されるような、何か専門的なものがあれば派遣じゃなくて正規雇用してもらえたかもしれなかった。
再就職の難しさを経験して、心底そう思う。