エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける

「直樹さん、お酒好きだから」

 そんな言葉で誤魔化しながら、私はバッグからスマホを取りだす。この状況でもうんともすんとも鳴らない。彼からの着信を知らせてくれないそれがなんだか憎らしくて、だけど放ってもおけずにいつ着信があってもわかるようにテーブルの上に置いた。

「後藤さんは?」
「え?」
「酒。結構好き?」

 頬杖を突いてグラスを揺らしながら、高野先生が私を見る。さっきの、うっとりと味わっていた顔を見られた以上、隠す意味はないなと観念した。

「……実は、大好きです」

 あんまり飲み過ぎると直樹さんが嫌がるから、いつもはあまり飲まないようにしている。時々一緒に飲みに行くサチは知っているけれど、高野先生や他の人は私があまり飲めないと思っていたはずだ。
 正直に白状してしまったら、なんだか少し気持ちがすっきりした。

「じゃあ、今日は遠慮せずに飲めば」
「でも、直樹さんがいつ来るかわからないし」
「その時は俺が飲ませたって言うよ。ちゃんと、無理やり連れて来たって言うし」

 料理を食べながら話をしていると、一杯目のカクテルは私のグラスも彼のもあっという間に空いた。彼がすぐに次におススメのカクテルを教えてくれて、二杯目は少し強めのものだった。
 店に入って一時間、二杯目のグラスが空いた頃。
 やっぱり直樹さんが気になって、こちらからメールをしてみたが既読すら付かない。

「直樹さんに、ご飯食べ終わって待ってますって送っておきます。高野先生、帰るお時間になったら私のことは気にしないでくださいね」
「俺が誘ったのに、置いて帰れるわけないだろう。せめて連絡つくまでは一緒にいるよ」

 私の言葉に、高野先生は心外だとでも言うようにむっと眉をしかめた。

「でも、それじゃいつになるか」
「いつになるかわからないのに、待たされるのに慣れすぎ」
「う」

 ごもっともな意見に言葉を詰まらせながら、メールアプリを開く。店の名前を伝えておこうかと思ったが、いつまでいるかわからないしそれはやめておいた。メッセージを入力していると三杯目のカクテルが運ばれてくる。
 二杯目のカクテルが思っていた以上に効いて、頭がふわふわとし始めていた。実は、酒好きではあるけれど特別強いわけではない。

 これは、ちょっとペースを考えながら飲まなくては。

 美味しいからといってぐいぐいいき過ぎないように、食べることと喋ることに集中することにした。

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