エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
「あー……なるほど」
棒読みでそんなセリフが出た。あんまりにも惨め過ぎて、ショックを顔には出したくないのに唇がひきつって上手く笑えない。
「それは、しかたないかも」
――幼馴染、なんて。絶対、かなわない。
私と直樹さんも付き合いで言えば長い。だけど、常に私が追いかけていたような感じだった。幼馴染なんていう子供の頃からのきずなになんて、太刀打ちできる自信がない。
口の中がカラカラに渇いて、カクテルのグラスに手を伸ばすと一息に飲み干した。一瞬くらりとしたのに、頭の芯はしっかりとしていて酔えそうにない。
「仕方ないわけあるか」
吐き捨てるような強い口調が耳に残って、はっとする。さっき直樹さんたちが店に来たのを見てから、動揺して視界に映る何もかもがぼんやりとしていた。それが、今の声で我に返って、はっきりと高野先生の顔が見える。
「卑屈になるな。怒っていいに決まってる」
真剣な目をまっすぐに私に向けてくる。彼の瞳は、私以上に怒りを含んでいるように見えた。私はぽかんとして、彼の言葉を反芻した。
「……怒っていい」
確かにその通りだ。怒って当たり前のことを直樹さんにされているのに、なんで私がこんな諦めのような気持ちにならなければいけないんだろう。
そう気が付くと、次々と頭に浮かんでくる。
この春に再会したということは、彼がのらりくらり私と会うのを避けるようになった時期と重なる。