エリート外科医は最愛妻に独占欲を刻みつける
店を出て、扉が閉まるのも待たずに彼は早足で夜の通りを進んだ。
しばらく彼は無言だった。どこまで歩くのかわからなかったが、なかなか涙も嗚咽も止まらず、確かめるのも億劫で私はただ促されるままについていく。
人通りの少ない住宅街まで来て彼は、やっと歩調を緩めた。
「ごめん、勝手に」
ふるふると顔を横に振って、私は深呼吸をして息を整える。鼻や目元が熱を持っているが、どうにか涙が止まったところだ。
「大丈夫です。こっちこそ、ごめんなさい。高野先生にあんなこと言わせてしまって」
彼の手が私の肩を離れていく。が、すぐに腕を取られて手を繋ぎ、先ほどよりはゆっくりと誘導される。
涙の跡が恥ずかしくて瞼を指で拭っていると、また彼が立ち止まりその手も取られた。
「怒ってもいいし泣いてもいい。我慢するな」
「や……ちょっと、待ってください。やっと、収まったのに」
そんな優しい言葉をかけられたら、また止まらなくなってしまう。しかし、彼は私の手を掴んだまま離そうとせず、顔を隠させてくれない。
「ふ……う……」
ぼたぼたぼた、とまた涙腺が決壊した。
「うううぅ」
みっともない。情けなかった。二股をかけられてるのにも気付かずにノコノコ出向いて、天秤にかけられた挙句あちらに傾いたのだ。
どれだけ強がっても、捨てられたのは私。その事実が情けないし悔しいのに、怒るよりもやっぱり涙が出てしまう。